生物多様性の取り組み
当社長生工場の過去
かつて当社長生工場の一帯には低湿地が広がり、そこには豊富な食虫植物や湿性植物を含む群落が存在し、日本でも有数の植物の宝庫といわれていました。その後、湿地帯は工業団地の区域となりましたが、当社としては、従来から湿性植物が自生している10千㎡の湿地帯を現状維持することとし、また、湿地の乾燥化を防止するために敷地内に17千㎡の調整池を作りました。
千葉県レッドリストによると、過去、長生工場の一帯に自生していた植物のうち、現在、34種類が絶滅危惧種に指定されており、地域の中でも貴重な場所となっています。
湿性植物の保全活動
長生工場の湿地帯には、14種類の絶滅危惧種が確認でき、保護活動を行っています。一方で、20種ほどの絶滅危惧植物の種が休眠しているか、または発見されずに自生している可能性があります。そのため、絶滅危惧植物の保護に加えて発芽促進活動と自生植物の調査を実施しました。
保護活動
保護活動では、希少種が駆逐されないよう、大型植物・外来種の駆除、草刈りを行いました。
発芽促進活動
発芽促進活動では、表土のかく乱を行うことで埋土種子の発芽を促し、絶滅危惧種を含む新たな湿生植物の発芽を促進しました。表土のかく乱を行なったエリアでは、食虫植物の「シロバナナガバイシモチソウ」と「コモウセンゴケ」が発芽し、成長していることが確認できました。
また、秋に採取した種を翌春にまき、種を分散させることで環境を変え、発芽に必要な条件を調査しています。
自生植物の調査
湿生植物の多くは一年草であり、毎年発芽から種ができるまで観察を行なっています。
自生している植物の調査活動を行うため、梅雨後に観察路の草刈りを実施しました。その後、夏から秋にかけて観察路に6種の絶滅危惧植物を確認しました。生育環境の変化によるものと考えられるため、これまで冬季に実施していた保護区域の草刈りを梅雨明けにも実施し、2023年から湿生植物の生育状況の違いについて観察しています。
年々増加している食虫植物のシロバナイシモチソウを観察しています。
自生している場所から離れた所で確認された食虫植物のコモウセンゴケ
観察路に確認されたイトイヌヒゲとゴマクサの群落
調整池の絶滅危惧種保全活動
2016年に当社調整池の生態系調査を実施した際に、絶滅危惧であるミナミメダカの生息が確認されていました。しかし、アカミミガメやブラックバス、ソウギョといった天敵となりうる外来種の生息も確認されたことから、2019年よりサンプリングによる調査頻度を増やし、生態系への影響をモニターすることとしました。2019年から2年間は、ミナミメダカの存在を確認できませんでしたが、2022年には43匹を採取し、生息していることが確認できました。生息環境が懸念されたことから、水槽内での隔離を開始し、2023年の春には30匹の稚魚を確認することができました。今後も放流に備えて調整池の生態系調査は継続していきます。
ミナミメダカ繁殖の試み(水槽)
水槽内の産卵床